
「もう疲れた」
そう思うのは、あなたの我慢が足りないからでも、あなたが弱いわけでもありません。
ただ、一つ気になることがあります。その「疲れた」という感覚、ちゃんと自分で気づけていますか?
私はずっと、気づけていなかったんです。疲れているのに、疲れていると認識できないまま、体だけが先に悲鳴をあげていた。
この記事では、アスペルガー傾向のある夫との暮らしで「疲れた」と感じる理由と、私が体験した転換点をお伝えします。「我慢が正解」「離婚が正解」といった正誤の話ではありません。あなたが自分の軸を取り戻すための、一つの視点として参考にしていただければ。
「疲れた」に、気づけていなかった
アスペルガー傾向のある旦那さんとの暮らしで消耗するのには、はっきりした理由があります。
感情的な共感が返ってこない。批判や否定には敏感なのに、「ありがとう」の言葉がない。一般的な夫婦向けのアドバイスが、まったく通用しない、ということです。
でも私が体験した消耗は、もう少し手前にあった気がしています。
体が先に悲鳴をあげていた。
独身時代にコンサルタント職のハードワークで発病して、一旦治っていたメニエール病が、夫との暮らしの中で悪化し始めました。耳鳴りが戻ってきたのです。
それに加えて、早朝覚醒——疲れているはずなのに、朝4時や5時に目が覚めてしまう。そして、不安や焦りが押し寄せてきて、目が冴えてしまい、その後は眠れない。
慢性的に疲れているのに、「疲れた」と感じる余裕すらない状態でした。
思い返せば、「私がもっとうまくやれば、夫との関係は変わるかもしれない」と思い続けていたから、疲れを認識したら立ち止まってしまうような気がしていたのだと思います。立ち止まれない。だから疲れていると気づかないようにして、前に進み続けていたんです。
でも体は正直で、本当はメニエールと早朝覚醒という形で、ちゃんと「限界」を教えてくれていたのです。
「疲れた」の奥にあったもの
夫からの否定的な言葉が繰り返される中で、いつのまにか私には「夫の反応を正解の基準にする」習慣が染みついていました。
夫が機嫌よければ、今日は良い日。夫がため息をつけば、私が悪かったんだ。夫が批判したら、私が変わらなければいけない。
すべての判断基準が、夫の出方になっていました。
息子が小3になった頃には、夫は家の中で私を完全に無視するようになりました。話しかけても返事がない。目も合わない。私がそこにいないかのように扱われる。夫のいるリビングに足を踏み入れると、チッと舌打ちをする。
今振り返ると、あの頃は私自身も視野がとても狭くなっていたと思います。夫が怖かったんです。苛立ったような口調、舌打ち、はぁーというため息、全てが怖かったんです。
声を荒げて怒鳴られるということはありませんでしたが、でも私の存在を、言動を否定するようなその態度がとても怖ろしかったのです。そしてその怖れの感情に、私はずっと飲み込まれていました。
飲み込まれているときは、「なぜこうなっているのか」を考える余裕なんてありません。疲れていることに気づく余裕もありません。ただただ毎日をやり過ごすのが精いっぱいでした。
突然やってきた転機
息子が小4年の夏のある日、私が一泊の出張から帰宅すると、家の空気が違いました。
玄関のドアを開けた瞬間、わかりました。家電も家具も、冷蔵庫も洗濯機も、タオル一枚、箸一膳さえ残っていない。夫が家中の荷物と共に、息子を連れ去る「家空っぽ事件」が起きたのです。
その夜は、内覧会のように空っぽになった家で、息子のことが心配で、眠れませんでした。でも翌日は何事もなかったかのように出社し、クライアントとのミーティングをこなしました。心の内では、息子が今どこにいるのかすらわからなず、胸が潰れるような思いでいました。
調停という第三者の視点が、私を変えた
息子を取り戻すための調停には、半年かかりました。
調停の場では、調停員と児童心理学の専門家が、息子にとって一番幸せな環境はどこかを客観的に調査してくれました。保育園の連絡帳、行事の記録、息子の作文、学校の先生へのヒアリング——そこから見えてきたのは、息子が生まれてからの10年間、私がちゃんと向き合ってきた事実でした。
夫の言い分は「こいつは母親としてダメだから、家には要らない」というものでした。でも第三者の目は、その言い分とはまったく違うものを示してくれた。「私が母親として”ダメ”だったわけじゃなかった」——そう思えたのは、このときが初めてでした。
自分が渦中にいると、どうしても見えなくなることがあります。「夫が私をこんな風に扱うのは、私がいたらないからではないか」という思い込みも、そのひとつです。でも外側から客観的に見てもらうことで、ようやく「外から自分と夫のことを見る」視点が持てるようになりました。
「夫の言動は、特性から来ているんだ」という気づきも、この半年があったからです。
ちなみに調停の場で、調停員の方に毎回驚かれたことがあります。
「旦那さんに息子さんを連れ去られるなんてことがあったのに(裁判官も前代未聞と驚いていたとのこと)、なぜそんなに落ち着いているのですか?」
感情カウンセラーとして身につけていたスキルを使い、不安・悲しみ・悔しさをその都度感じ切ることができていたから、弁護士さんと共に冷静に調停を進められたのだと思います。もし私が感情的になっていたら、夫の変な論理にもっと振り回されていたかもしれませんし、あの半年を乗り越えることは、ずっと困難だったことでしょう。
息子が戻ってきてから、私は変わった
半年後、息子は無事に私のもとへ戻ってきました。
その後から、ちゃんと眠れるようになりました。
悪化していたメニエールも落ちついてきました。朝4時・5時に目が覚めることもなくなり、目覚ましが鳴るまでゆっくり寝ることができるようになりました。体と心が「疲れた」と認識できるようになった——それが、私が実感した最初の変化でした。
それまでの私は「寝ずに頑張る」が当たり前でした。でも眠れるようになってから、「しっかり休んで体と心を回復させてから行動する」という感覚が、少しずつ身についてきました。
疲れを感じられるということは、自分の感覚が戻ってきたということです。それが、自分軸を取り戻す最初の一歩でした。
自分軸を取り戻すために、私がやったこと
体験を通じて気づいた3つの視点をお伝えします。「こうすれば夫婦関係が改善する」という方法論ではありません。あくまで、私が体験してきたことです。
1. 「体の声」を聞くことが、最初の一歩
メニエールの再発、早朝覚醒——私の場合、体が先に「限界」を伝えてくれていました。「疲れた」という感覚を認識できることそのものが、自分軸への入り口です。「私は今、疲れている」という体の声に気づけるなら、そこから変化は始まります。
2. 「外からの目」に助けを借りる
飲み込まれている状態のとき、自分ひとりでは見えていないことがあります。私にとってそれは調停でしたが、カウンセリングでも、信頼できる誰かとの対話でもよいと思います。「自分と夫のことを外から見る視点」を持てたとき、初めてその状態から一歩出られました。
3. 「自分の反応」が変わると、夫の見え方が変わる
アスペルガー夫の先天的な特性は変えられません。でも、飲み込まれ方は変えられる。「夫がこう言うのは、夫の特性が出ているんだ」と、少し引いたところから見られるようになったとき、長い間抱えていた重荷が少しだけ軽くなっていくのです。
最後に—「疲れた」と感じているあなたへ
アスペルガー夫との暮らしで疲弊しているのは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
「疲れた」という感覚に、ちゃんと気づいているなら、それはすでに変化の始まりにいるということ。
「我慢か離婚か」という二択でもなく、「夫を変えなければ何も変わらない」でもなく——まず、今の自分が少しだけ楽になれる視点を見つけること。それが、最初の一歩だと私は思っています。
最後に——「疲れた」と感じているあなたへ
アスペルガー夫との暮らしで疲弊しているのは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
「疲れた」という感覚に、ちゃんと気づいているなら、それはすでに変化の始まりにいるということ。
「我慢か離婚か」という二択でもなく、「夫を変えなければ何も変わらない」でもなく——まず、今の自分が少しだけ楽になれる視点を見つけること。それが、最初の一歩だと私は思っています。
私が変われたように、あなたも変われます。そのことを、私自身の実感やクライアントさんの変化をもとに信じています。
疲れているのに、疲れたと言えない。夫の顔色を見ながら、自分の感覚を後回しにし続ける——そのパターンは、変えられます。変わるために必要なのは、まず自分の体の声に気づくこと。小さな一歩から、始められます。そんな変化を共に歩めたらと思います。
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私が変われたように、私のクライアントさんたちが変わったように、あなたもきっともっと自由になれると信じています。