
子供に「何か嫌なことがあった?」と聞いても、返ってくるのは「別に」——そんなやりとりが増えていませんか。
アスペルガー(自閉スペクトラム症)の傾向がある父親がいる家庭では、子供の心にいくつかの共通したサインが出やすいことがあります。今日は、その具体的なサインと、母親である私たちにできることをお伝えします。
サインのチェックだけではなく、「その先に希望がある」ということをあなたに伝えたいのです。
(前提となる仕組みそのものは、前回の記事「子供が「お父さんは?」と聞き返す理由―アスペルガー夫のもとで起きる3つの心の変化」で解説しています)
子供に出やすい7つのサイン
以下は、私がこれまでセッションで出会ったママたちの言葉から整理した、子供に出やすいとされるサインです。あくまで「傾向」であり、すべての家庭に当てはまるわけではありません。視点のひとつとしてご参考にしていただけたらと思います。
① 父親が帰宅すると、家の空気が変わる
子供が(大人も含めて)自然と静かになる、テレビの音を下げる、会話が減るなど。「空気が変わる」と子供が感じているサインです。
② 父親の前では別人のように「良い子」になる
友人や祖父母の前では活発なのに、父親の前だと急に静かになる。「良い子」を演じるために感情を抑制している状態です。
あるママは、二人の息子さんのうち、父親の期待に応えようとする真面目な長男についてこう話してくれました。
「父親の前ではいつも『いい子』を演じているように見えるんです。私と一緒の時の、もっと茶目っ気のある息子らしさに蓋をされているような気がします。」
③ 感情を言葉にするのが苦手になる
「何が嫌だったの?」「どう思った?」と聞いても「別に」「わからない」という答えが多くなる。感情語彙が減っていくのは、感情を出す経験が減っていくサインのひとつです。
④ 物事の「正解」を気にしすぎる
絵の描き方、服の選び方、遊び方でも「これで合ってる?」と確認する。自分の感覚より先に正解を求める傾向です。
⑤ 大人の顔色を読むのが「上手すぎる」
「察する力がある子だね」と言われることも多いですが、それが生き延びるための対応スキルとして発達している場合があります。
うちの息子の場合、「空気を読む小学生」に育っていきました。息子が幼い頃は、夫が息子に否定的な言葉を浴びせることはありませんでしたが、私との関係性を見て察していたのでしょうね。学校でも、その場のお友達の様子を見ながら自分の立ち位置を決めることがどんどんうまくなっていったようです。
⑥ 感情表現が二極化する(爆発または無反応)
ふだんは感情を抑えているため、特定の場面で大爆発するか、あるいは何に対しても無反応になる。「扱いにくい子」と見られやすいですが、感情の出口が詰まっているサインかもしれません。
⑦ 学校や外でのトラブルが増える
家庭内で出せないストレスが、外(学校・習いごと)で出てくるパターンです。「学校ではいい子なのに家では荒れる」の逆で、「学校で荒れるのに家ではいい子」という場合も、家庭内でのストレスが外に向かっている可能性があります。
クライアントさんからは「父親には体力も言葉も太刀打ちできない分、母親にあたる」というケースを伺うこともあります。子供にとって、感情をぶつけられる相手が、家の中で唯一「安全な人」であるお母さんになっているのかもしれません。
いくつ当てはまりましたか。1つでも当てはまるなら、それはあなたが「気づけている」ということです。
この7つのうち、いくつも当てはまると打ち明けてくださるママたちに、私は何度も会ってきました。
「私の子育てのせい?」と思ってしまうあなたへ
子供の変化に気づいたとき、多くのお母さんが最初に感じるのは「私のせいかもしれない」という罪悪感です。
「もっと楽しい家庭を作れていたら」「私がうまく夫をコントロールできたら」「もっといいお母さんだったら」
でも、子供の心に影響が出ているのは、あなたの子育てが悪かったからではありません。家庭というシステム全体が、長期間にわたって特定のパターンを繰り返してきた結果として起きています。
お子さんの変化に気づけているあなたは、すでに十分にお子さんのことを見ています。気づけているということは、変えられる可能性がそこにあるということでもあるんです。
母親にできる3つのこと
アスペルガーの傾向のある旦那さんの特性そのものを変えることは、すぐにはできません。でも、私たち母親にもできることはあります。
1. 子供の感情を「代わりに言語化する」
子供が感情を言葉にできないとき、お母さんが代わりに言葉にしてあげることも有効です。
「〇〇と言われて、くやしかったね」
「今日は静かだね。なんかあった?」
正解を求めなくていい。「こういう気持ちかな?」と声に出すだけでも、子供は「お母さんはわかろうとしてくれている」と感じます。それが、感情の出口を少しだけ開けることにつながります。
2. 「家の外」に安全地帯を作る
子供が家庭以外で、リラックスして自分を出せる場所を作ることは重要です。習いごと・学校の特定の先生・祖父母の家・部活——どこでも構いません。
「ここにいれば、正解を探さなくていい」という場所が一か所でもあると、子供の心の緩衝材になります。
3. 母親自身が自分軸を取り戻す
これが最も重要なことです。
ママが旦那さんの言動に一喜一憂し、感情が安定していない状態だと、お子さんはママの感情まで読まなければならなくなります。
私自身、当初は夫に「もう少し息子の答えを待ってみたら?」と提案したことがありました。でも「お前はすぐに、〇〇に答えを聞く。お前には答えがないのか!」と反論されて、以来、夫への提案はやめることにしました。
その決断こそが、転機になったのです。
夫をコントロールしようとするのをやめ、夫への評価を手放すことで、私の中に静けさが戻り始めました。そして、夫への姿勢が変わると——子どもに向き合う方法も、自然に変わり始めたのです。
ママが自分軸を持って、夫の言動に過剰に反応しなくなると、子供は「お母さんは大丈夫だ」という安心感を得やすくなります。子供の心を守るためにも、まずママ自身が感情を整えることが土台になります。
子供の変化を後押しできます
息子が小学4年生のときに「家空っぽ事件」が起きました。夫が息子を連れて家を出て行った時点で、状況は一変しました。その後、息子は無事に私のもとに戻ってきて、離婚することになります。
その後、私との関係性の中で、息子は自分の意見をしっかり言えるようになっていきました。
中学に入った息子は、数百台のマウンテンバイクの中から、自分の感覚だけを頼りに数十分で1台を選べるように成長しています。
親の答えを先に聞く必要もなく、自分の感覚を信頼して、決断できる子供になっていたのです。
まとめ|あなたが気づいた違和感は、変化のチャンス
アスペルガー傾向のある父親がいる家庭で、子供の心に影響が出やすい傾向があります。でも、その影響が「取り返しがつかないもの」というわけではありません。
むしろ、あなたが「何かが起きているかもしれない」と気づいたその瞬間から、あなた自身が変化を起こしていけるのです。
子供の変化のサインに気づき、感情の言語化を助け、安全地帯を作り、そしてお母さん自身が自分軸を取り戻す——そのプロセスが、子供の心を守ることにつながっていくと思うんです。
あなたが子供の自分軸に丁寧に寄り添うことで、子供は少しずつ変わっていく可能性があります。
マウンテンバイクを選んだ時のように、数百の選択肢の中から自分の感覚を信頼して決断できる子供へと、成長していく可能性があるんです(個人差はあります)。
そして、その決断力・直感・自分軸の力は、やがて人生全体を支える力になっていくと私は信じています。
この記事を読んで、少しだけ楽になった——そう感じたあなたへ。
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