
「同じ言葉なのに、前より傷つかなくなった。」
そう感じる瞬間が、今の私にはあります。
アスペルガー傾向のある夫からの批判や否定の言葉に、以前の私は、何日も引きずられていました。頭の中で同じ言葉が繰り返し再生され、眠れない夜が続くこともありました。仕事をしていても、家事をしていても、ふとした瞬間にその言葉がよみがえってきて、心がざわつく——そんな日々でした。でも自分に向き合ううちに、同じような言葉を投げかけられても、以前ほど長く引きずられなくなっていきました。
何が変わったのか——この記事では、その理由についてお伝えします。夫の言葉そのものが、優しくなったわけではありません。変わったのは、私の中にあった、古い心の傷でした。
何を言われても、怖くて仕方なかった
アスペルガー傾向のある夫との暮らしの中で、批判や否定の言葉は、年々エスカレートしていきました。
「お前は何もわかっていない」「息子が将来ダメになったらお前は責任をとれるのか」——そんな言葉を向けられるたびに、心がギュッと縮こまっていきました。怖れは、日を追うごとに大きくなっていきました。
それでも私は、あるパターンをやめられませんでした。仕事も、家事も、育児も、「私がもっと頑張れば、きっと夫の言葉も変わるはず」「まだまだ私の努力が足りないんだろう」——そう思いながら、休むことなく走り続けていたのです。夫の機嫌を損ねないように先回りして動き、家の中で波風を立てないように、常に神経を張り詰めていました。
頭では、「夫婦なのに、こんなに夫に気を遣う必要はないはずだ」とわかっていました。それでも、実際の行動は変わりませんでした。怖れが大きくなればなるほど、夫の顔色を伺う頻度は増えていったのです。
振り返れば、あの頃の私は、「頑張ることをやめたら、もっとひどいことになる」という怖れに、常に急き立てられていました。立ち止まって休むという選択肢なんて、全くありませんでした。
「私がもっとちゃんとやれば、否定されずにすむかもしれない」「私がもっと頑張れば、この状況は変わるかもしれない」
そう思いながら、来る日も来る日も、夫の反応を基準に自分の言動を決めていました。誰にも話せずに、人の手も借りず、自分一人でこの状況をなんとかしなければ、と思い込んでいたことも大きかったと思います。
でも、どれだけ工夫しても、どれだけ頑張っても、否定の言葉は止まりませんでした。むしろ、頑張れば頑張るほど、疲れだけが積み重なっていきました。
夫の言葉だけが原因じゃなかった
夫との暮らしの中で、このパターンをやめることは、ずっとできませんでした。唯一、変化のきっかけになったのは、少し違う場所からでした。
ちょうどその頃、私はヒーラー・感情カウンセラー・リーダーになる過程にいました。クライアントさんにサービス提供する立場になる前に、まず自分自身がヒーリングを受けました。
当時の私は、「なぜこんなに傷つきやすいのだろう」「もっと強くなりたい」と、自分を責めることもありました。でも実際には、強さの問題ではなかったのだと、後になってわかりました。
その中で見えてきたのが、「バーストラウマ」と呼ばれるものでした。生まれてきたこと自体を、歓迎されなかったと感じてしまうような、根深い心の傷のことです。加えて、幼少期から思春期にかけての満たされない思い——「インナーチャイルド」と呼ばれるもの——も、私の中には積み重なっていました。バーストラウマもインナーチャイルドも、生まれ育った環境の中で、誰にでも起こり得るものとされています。特別なことではなく、多くの人が、程度の差こそあれ抱えているものです。
これらは、夫との暮らしの中で新しくできた傷ではありません。もっとずっと前から、私の内側にあったものでした。
実はこの傷は、生まれてすぐの体験にまで遡ります。
詳しくはnote記事でお伝えしていますが、母の入院で数ヶ月離れ離れになった時期があり、それが「バーストラウマ」の一因になっていたのだと思います。
そして、夫から否定的な言葉を受け取るたびに、その古傷が一緒に疼いていたのだと、わかってきました。夫の一言が、私の中に元々あった「自分は歓迎されていないのではないか」「自分は満たされてはいけないのではないか」という感覚を、そのまま刺激していたんです。
だから、夫の言葉が10の強さだったとしても、私が受け取る痛みは、20にも30にも増幅してしまっていたのです。傷ついていたのは、夫の言葉だけが原因ではありませんでした。
古い傷が癒えると同じ言葉も刺さりにくくなる
自分の内側と向き合うことで、バーストラウマやインナーチャイルドは、少しずつ減ってきました。「消えた」というより「軽くなった」という感覚です。
加えて、何か言われて傷ついた時、その怖れや不安も自分でクリアリングできるようになり、感情も溜まらなくなっていきました。
そして自分の変化に気づきました。夫から否定的な言葉を向けられても、以前ほどダメージを受けなくなっていたのです。
夫の言葉、言い方そのものは、以前とそう変わりません。それでも、かつてなら何日も引きずっていた言葉が、今は「夫はそう感じているんだな」と受け止めて、わりと早く切り替えられるようになっていました。頭の中で同じ言葉が延々と再生されることも、少なくなっていったのです。
以前の私は、夫の言葉が「今の私」だけでなく、「これまでの私」の人格全てを否定しているように感じていました。でも古い傷が軽くなってからは、夫の言葉は、あくまで夫がその瞬間に主観で感じていること、という一つの事実として、切り離して受け止められるようになっていきました。
夜、布団に入ってからも同じ言葉を反芻して眠れなかった時間が、少しずつ減っていきました。心がざわついても、その日のうちに落ち着きを取り戻せることが増えていったのです。
この変化に気づいたとき、「自分を守るために必要だったのは、夫を変えることでも、我慢する力をつけることでもなく、自分の内側の傷に気づき、癒していくことだったのだ」と、腑に落ちる感覚がありました。
古い傷が疼かなくなった分だけ、夫の言葉が「今、目の前で起きている一つの出来事」として受け止められるようになったのです。過去の傷と結びついて何倍にも膨らんでいた痛みが、本来の大きさに戻っていったのだと思います。10の言葉を、10のまま、もしかしたら5くらいのものとして受け取れるようになる——それだけで、日々の消耗は大きく減っていったのです。
(まとめ)古い傷に気づくことから、変化は始まる
否定的な言葉に深く傷ついてしまうのには、理由があります。一つの理由として、その言葉が、あなたの中にある古い傷に触れているからかもしれません。
私自身、暮らしの中で夫との関係そのものを変えることは、簡単にはできませんでした。夫の特性も言動も、私の意志だけで変えられるものではなかったからです。それでも、変えられたことが一つありました。それは、私自身の内面でした。
自分の中の古い傷と向き合い、少しずつ癒やしていったことで、同じ言葉でも、受け止め方が変わっていったのです。古い傷は、意志の強さだけで消えるものではありません。それでも、適切な方法で向き合っていくことで、軽くなっていく実感があります。それが、私自身の体験です。
私は最終的に、夫との関係を続けるのではなく、離れるという選択をしました。ただ、それが唯一の正解というわけではありません。関係を続けるとしても、離れるとしても、自分の中の古い傷が癒やしていくことは、あなたらしい人生を後押ししてくれます。
大切なのは、「夫が変わってくれる」のを待ち続けることでも、「自分がもっと我慢できるようになる」のを目指すことでもありません。自分自身の内側にある、古い傷に気づき、それと向き合っていくことです。その積み重ねの先に、同じ言葉を向けられても、以前ほど揺さぶられない自分に近づいていくこともできると思います(実感には個人差があります)。
私自身、この変化に気づくまでには、長い時間がかかりました。それでも、振り返ってみると、確かに変わってきたという実感があります。それは、頑張って手に入れたというより、少しずつ、自分の内側と丁寧に付き合ってきた結果、自然とそうなった、という感覚に近いです。
もしあなたも今、パートナーの言葉に繰り返し深く傷ついているとしたら、そこには理由があります。あなたの中にある、まだ癒えていない古い傷が、その痛みを大きくしている可能性があるかもしれません。そしてその傷は、丁寧に向き合っていくことで、癒えていくこともあるんです。
旦那さんの言動が変わらなくても、あなたの内面が変わっていくことで、同じ言葉が、以前ほど痛くなくなる日が来ることもあります。
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よくある質問
アスペルガー夫の否定的な言葉に、なぜここまで深く傷ついてしまうのですか?
言葉そのものだけでなく、自分の中にある古い心の傷が同時に刺激されている場合があります。原因は一つとは限りません。
バーストラウマ、インナーチャイルドとは何ですか?
私の所属する感情カウンセラー協会では、実践論に基づき「胎児期から生後数か月頃までについた心の傷や満たされなかった思い」をバーストラウマ、「その後、思春期頃までについた心の傷や満たされなかった思い」をインナーチャイルドととらえています。例えばバーストラウマにより、自分は生まれてきたことを歓迎されなかったのではないかという思いが心の中に根付いてしまうことがあります。医学的な診断名ではありません。
バーストラウマやインナーチャイルドを癒すと、否定的な言葉に傷つかなくなりますか?
「傷つかなくなる」と言い切ることはできませんが、古い傷が軽くなることで、傷つきにくくなる感覚は起こり得ます。感じ方には個人差があります。
一人で古い心の傷と向き合うのは難しいのでしょうか?
一人で抱え込まず、カウンセラー、ヒーラー、リーダーなど、伴走してくれる存在を頼ることも一つの選択肢です。