
「夫が怖い。でも、何がこんなに怖いのか、自分でもうまく説明できない」
アスペルガー傾向のある旦那さんと暮らしていると、そんな感覚を抱えたまま毎日を過ごしているお母さんは、少なくないと思います。外では仕事をきちんとこなしているのに、家に帰ると、旦那さんのひと言に体がこわばる。誰かに話そうとしても、「気にしすぎじゃない?」と言われそうで、言葉にできない。
私も、そうでした。夫の言葉が、とにかく怖かった。しかも当時の私は、カサンドラ症候群と呼ばれる状態にあり、夫の言葉をそのまま真に受けてしまって、余計に苦しかったのです。けれど今振り返ると、その怖さは1種類ではありませんでした。出どころの違う3つの怖さが重なって、ひとつの大きな「怖れ」になっていたのです。
この記事では、その怖さを「相手の領域」「私の領域」「二人の関係性の領域」の3つに分けて整理します。そして、私の体験を踏まえた持論では、この3つのうち、実際に手をつけられ領域はたったひとつだけです。どの領域の怖さなのかが分かると、どこに力を使えばいいのかも見えやすくなります。
アスペルガー夫への怖さは3つの領域からくる
「気にしすぎだよ」「少し距離を取ったら?」。よく耳にする助言ですが、私は、こうした助言だけでは楽になりませんでした。怖さをひとまとめにしたまま、どこに手をつければいいのか分からなかったからです。
私が自分自身の体験やクライアントさんとのセッションを通して整理した「3つの領域」は、次のとおりです。
- 相手の領域:夫が何に反応するのか、予測できない怖さ
- 二人の関係性の領域:相手からの批判が重なり、区切りがないまま積み上がっていく怖さ
- 私の領域:夫の言葉が、自分の中のもっと古い傷に触れることによる怖さ
私の場合は3つともあり、表に見えていたのは二人の関係性の領域、いちばん奥にあったのが私の領域でした。ここからひとつずつ見ていきます。
相手の領域
「相手の領域」では、夫が何に反応して怒るのか、事前に分からないことから怖さが生まれていました。
私にとって、夫の非難の言葉は、いつも突然でした。夫がなぜそんなに反応しているのか、考える余地はほとんどありませんでした。相手の言動が読めないこと自体が、とにかく怖かったのです。
心理学には、この怖さの仕組みを考えるヒントになる研究があります。電気ショックなどを使った実験で、予測できない嫌な出来事は、予測できる嫌な出来事よりも、不安を持続させやすいことが示されています(Grillonほか, 2004)。この事例が夫婦関係にそのまま当てはまるという意味ではなく、怖さの仕組みを考えるたとえとして紹介します。
また英語圏には、相手の反応を避けるために、自分の言葉や声のトーンを常に見張る状態を「卵の殻の上を歩く (walking on eggshells)」という表現があります。いつも家の中で身構えていた私は、まさにこの状態でした。
この怖さについての私の体験は、こちらの記事をどうぞ。
👉 【 夫が怖いのは「いつ」が読めないから 】(noteで読む)
ただ、この領域は、私は手をつけられませんでした。
かつての私は、この領域に踏み込もうとしていました。でもそれは、無謀なことでした。誰が相手でも、相手が何に反応するかを予測するのは難しいものです。ましてや夫は、アスペルガー傾向のある人。夫のこだわりの領域には、独特なものがありました。それを予測するのは、とても難しいことなのに、私は予測しようとしては、挫折を繰り返していたんです。
今なら、夫が何に反応するのかは夫の問題で、私が決められることでも変えられるものでもない——と思えます。だからここに力を注ぎ続けるより、自分がマネージできる領域にエネルギーを注いだほうがいい、というのが、今の私の考えです。
二人の関係性の領域
私にとって、いちばん表層に見えていたのが、この領域です。
夫の批判は、どんどんエスカレートしていきました。私は、怖くてただ黙り込む。我が家では、ぶつかり合いになることもありませんでした。ひとつの批判のはずが過去の批判まで引き出され、「だからお前はダメなんだ」と重ねて言われる。その繰り返しでした。きつかったです。解決の糸口も見えませんでした。
ここで起きていたのは、「区切りがない」ということです。言い合いのあとに謝ったり、話し合ったり、何となく空気が戻ったりして、緊張がいったんほどける夫婦もあります。でも私たち夫婦には、その区切りがありませんでした。批判されて、私が黙って、それで終わり。緊張はほどけないまま次へ持ち越され、怖さは1回ずつ消えるのではなく、重なるように積み上がっていったのです。
ゴットマン研究所も、神経多様性(脳の情報の処理のしかたが異なる)カップルでは、定型発達同士の夫婦が自然に行う「空気を読んだ仲直り」が働きにくく、対立が解消されないまま積み重なりやすいと紹介しています。
黙り込むのは、怖い相手の前で衝突を避けるために私が身に着けた、身を守る術だったんです。ただ、黙ることで区切りがつかず、怖さは積み上がっていきました。
この領域は、本来は二人が調整し、すり合わせていくものです。でも私の場合は、ここには全く手がつけられませんでした。
私の領域
「私の領域」は、外からは見えにくい、自分の内側の領域です。
あの頃の私は、夫の言葉がなぜこんなに怖いのか、分かりませんでした。でも、ヒーリングを受けて自分に向き合ううちに、もうひとつの理由に気づきました。私の中には、生まれてすぐの頃の心の傷(バーストラウマ)と、子供の頃から抱えてきた心の傷(インナーチャイルド)が、思っていたよりずっと大きくありました。そして夫の言動は、いつもそこに触れていたのです。
だから私は、身動きがとれませんでした。目の前の夫の言葉だけに反応していたのではなく、もっと古い痛みが、同時に揺さぶられていたからです。
同じ言葉でも、人によって怖さの大きさが違うのは、この領域の違いによるところが大きいと私は考えています。
心の傷の癒し方は、こちらの記事をどうぞ。
👉 【 アスペルガー夫の言葉に傷つくのは、古い心の傷のせいだった 】
そして、この領域だけは、あなたが自分で手をつけられる場所なのです。
「怖さの領域」セルフチェック
当てはまるものが多い領域が、あなたの怖さの中心かもしれません。
相手の領域
- 夫が何に反応して怒るのか、見当がつかない
- 家の中で、いつも相手からの次のひと言に身構えている
二人の関係性の領域
- 批判されたあと、話し合いも仲直りもないまま終わる
- 新しい批判と共に、前に言われたことまで持ち出される
私の領域
- 夫の言葉に、自分でも驚くほど強く反応してしまう
- 夫以外の人に言われても、同じように身がすくむ言葉がある
私の体験から言えるのは、手をつけられるのは、私の領域だけだったということです。相手の領域は、私には動かせません。二人の関係性の領域は、「私の領域」の状態が変わってくると、間接的に変化していくものだからです。
自分の中の古い傷に気づいたとき、はじめて「なぜあんなに身動きがとれなかったのか」が分かりました。そして私の場合は、私の領域に手をつけるうちに、二人の関係性の領域も、自然にほどけていきました。
ヒーリングを受けることで古い心の傷が軽くなり、自分軸を取り戻す覚醒塾などの学びを通じて、私は相手との距離感がとれるようになり、夫と自分は別物だと感じられるようになったのです(感じ方・変化には個人差があります)。
私は、「人は変えられない、だから結局は自分に向き合うしかない、自分と向き合えるのは自分だけ」と強く実感するようになりました。
すべての領域を、一度に何とかしようとしなくて大丈夫です。まずは、自分の怖さがどの領域から来ているのかを見分けること。そして、手をつけられる領域がひとつあると知ること。それが、出口のないトンネルから抜け出す最初の一歩になるかもしれません。
もしあなたが、旦那さんの言葉に身構えながら、外では仕事をこなし、家のこともきちんと回してきたなら。その怖さを「気にしすぎ」と片づける必要はありません。怖さには出どころがあります。そして、そのうち手をつけられる場所は、あなた自身の中にあります。出どころが見えるだけで、怖さの輪郭は少しはっきりしてくるはずです。
まとめ
- アスペルガー夫への怖さは、「相手の領域」「二人の関係性の領域」「私の領域」の3つからきている
- 手をつけられるのは、「私の領域」だけだった。「相手の領域」は動かすことが難しく、「二人の関係性の領域」は「私の領域」が変わって間接的に変化していく
- 私の場合、「私の領域」に手をつけるうちに、自然と相手との距離感がとれるようになり、「二人の関係性の領域」もほどけていった(個人差があります)
怖さを領域ごとに分けて見られるようになると、もし「全部私が悪い」と感じていたとしても、その大きなかたまりが少しずつほどけていくかもしれません。
よくある質問
Q. 夫がアスペルガーかどうか分かりません。この3つの領域は当てはまりますか?
A. 診断の有無にかかわらず、「相手が何に反応するか読めない」「批判に区切りがない」「言葉が古い傷に触れる」という3つの見方は、旦那さんへの怖さを整理する手がかりになります。旦那さんの特性を判断するものではありません。
Q. 黙り込んでしまう自分を変えたいです。どうすればいいですか?
A. 黙り込むのは、怖い相手の前で身を守る反応のひとつだと私は考えています。無理に言い返そうとする前に、まずは自分の怖さがどの領域から来ているのかを見分けてみてください。私の場合は、私の領域に気づいたことが、身動きのとれなさを理解するきっかけになりました。その上で、感情カウンセラーとして、自分自身の感情のクリアリングをしていきました。
Q. カサンドラ症候群とは何ですか?
A. カサンドラ症候群とは、アスペルガー(ASD)傾向のあるパートナーとの関係で、気持ちが伝わらない状態が続き、孤立や疲れが積み重なる状態を指す言葉です。医学的な診断名ではありません。
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※私は民間資格を持つ感情カウンセラーです。この記事は個人の体験にもとづくもので、医療ではありません。またカサンドラ症候群、バーストラウマ、インナーチャイルドは、心の傷を表す言葉として使っており、医学的な診断名ではありません。
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